一角獣の繭 建築探偵桜井京介の事件簿 (講談社ノベルス)/篠田 真由美

 栗本深春は桜井京介から、「聖女の塔」事件の後遺症が心配される蒼のお目付け役件、ボディガードを依頼される。安全のために蒼が連れて行かれたのは、上高地に近い会員制高級リゾート・鏡平。昔ながらの上流階級の人間のみが参加を許され、ひっそり世間から隠されて存在していた。

 蒼はそこで「一角獣」に出会う。杖をつき、張り詰めたような表情で自分をショウと呼べという七座晶那に、心惹かれていく蒼。晶那は数年前に家族を失っていた。別荘で祖母と血の繋がらない叔母と父が亡くなったのだ。祖母と叔母は焼死し、父はイッカクの牙に片目を貫かれて……。

 久々に読書をしてみました。
 久々のブログ更新です。
 数年前から、がくん、と読むペースが落ちたのも本当なんですが、なんとなく感想や印象を書くモードでなかったというのも大きい気がします。

 しかし、今回の本を読んで、忘備録って必要だなあ、と、とつくづく思いました。
 シリーズ前作の「聖女の塔」が出たのが、えっと……(ネットで確認中)……2006年か。
 この本が2007年発行なので建築探偵の刊行ペース的にはきちんと出ているのですが、私は前作は刊行して割とすぐ、本作はジャストナウ読み終わったので、4、5年空いてます。
 だから、読んでて何度も、「それ、誰ですか!?」という目に会いました。
 しかも、たしか、前作の「聖女の塔」は、シリーズの割と前の方の登場人物が重要なポジションで出てきて、これまた「そんな人いたっけ……か……?」という気持ちになってた記憶が(うっすらと)あります。
 1作ごとの事件とは別に、少しずつ主人公のまわりの物語が動いていくものがシリーズもの。それはいいとしても、連続ドラマばりに話の関係性が高いとなると、1年1作の刊行ペースはちとつらい。(主に私の記憶力的に)
そんな次第で、忘備録復活です。

 今回のメインは「蒼の恋」でしょうか。
 体も心も傷つけられた少女にかつての自分の姿を見て、自分が救われたように少女にも救われて欲しいと願い、時間をかけて寄り添っていく蒼。恋に見せかけて実のところは代償行為かな、と、思ったら、割と恋でした。
シリーズ1作目の「原罪の庭」では小さかった蒼も大学生。現実でも物語世界でも10年以上の年月が流れています。私が1作目を読んだのがたぶん10年くらい前だから……そりゃ、蒼だって私だって年を取るよね。(そして記憶力も落ちるよね!)
 久々にシリーズを読んで、なぜご無沙汰になってしまったか思い出しました。
 シリーズが進むごとにミステリ要素がだんだん薄くなってしまったから。

 本作、シリーズなので「建築探偵」を歌っていますが、建築探偵要素はあまりありません。
 ミステリ部分も……えっと、同じトリック、最近テレビアニメで見ました、っていうくらいなので、そこに期待して読むと裏切られると思います。
 ラストに向けて主人公を取り巻く大きなうねりが本流となってきたからです。この状態になると、地の文が好きか嫌いか。(小説として優れてるかとどうかではなく、単なる個人の好みです)
 ここ5年くらいの私は、このテイストの気分じゃなかったんだろうなあ、と、思いました。
 本作を読んでも、やっぱり蒼にちょっとしたズレを感じます。

 でも、あと2冊だもんね。
 せっかくなので完結まで読もうと思います。